2 民事実体法

新判例Quiz(23) ひさびさ・・・

<民法> 重要度 B

<問> 民法1041条1項に関する次の記述は正しいか。

民法1041条1項
 「受贈者及び受遺者は、減殺を受けるべき限度において、贈与又は遺贈の目的の価額を遺留分権利者に弁償して返還の義務を免れることができる。」

ア 遺留分権利者が受贈者又は受遺者に対し民法1041条1項の価額弁償を請求する訴訟における贈与又は遺贈の目的物の価額算定の基準時は、右訴訟の事実審口頭弁論終結の時である。

イ 遺留分減殺請求を受けた受遺者が民法1041条1項の規定により遺贈の目的の価額を弁償する旨の意思表示をし,これを受けた遺留分権利者が受遺者に対して価額弁償を請求する権利を行使する旨の意思表示をした場合,受遺者は,事実審の口頭弁論終結時からの遅延損害金を支払わなければならない。

 

 

 判例(最判平20.1.24裁判所HP)は,

(1)目的物返還請求権と価額弁償請求権の関係(価額弁償の履行の提供がある場合)
 「受遺者が遺留分権利者から遺留分減殺に基づく目的物の現物返還請求を受け,遺贈の目的の価額について履行の提供をした場合には,当該受遺者は目的物の返還義務を免れ,他方,当該遺留分権利者は,受遺者に対し,弁償すべき価額に相当する金銭の支払を求める権利を取得すると解される(前掲最高裁昭和54年7月10日第三小法廷判決,前掲最高裁平成9年2月25日第三小法廷判決参照)。」

(2)目的物返還請求権と価額弁償請求権(価額弁償の履行の提供がなされていない場合)
 「また,上記受遺者が遺贈の目的の価額について履行の提供をしていない場合であっても,遺留分権利者に対して遺贈の目的の価額を弁償する旨の意思表示をしたときには,遺留分権利者は,受遺者に対し,遺留分減殺に基づく目的物の現物返還請求権を行使することもできるし,それに代わる価額弁償請求権を行使することもできると解される(最高裁昭和50年(オ)第920号同51年8月30日第二小法廷判決・民集30巻7号768頁,前掲最高裁平成9年2月25日第三小法廷判決参照)。」

(3)価額弁償の履行の提供がなされる前に、遺留分権利者が価額弁償請求権を行使した場合の権利関係
 「上記遺留分権利者が受遺者に対して価額弁償を請求する権利を行使する旨の意思表示をした場合には,当該遺留分権利者は,遺留分減殺によって取得した目的物の所有権及び所有権に基づく現物返還請求権をさかのぼって失い,これに代わる価額弁償請求権を確定的に取得すると解するのが相当である。」

(4)価額弁償債務が遅滞に陥る時期
 「受遺者は,遺留分権利者が受遺者に対して価額弁償を請求する権利を行使する旨の意思表示をした時点で,遺留分権利者に対し,適正な遺贈の目的の価額を弁償すべき義務を負うというべきであり,同価額が最終的には裁判所によって事実審口頭弁論終結時を基準として定められることになっても(前掲最高裁昭和51年8月30日第二小法廷判決参照),同義務の発生時点が事実審口頭弁論終結時となるものではない。そうすると,民法1041条1項に基づく価額弁償請求に係る遅延損害金の起算日は,上記のとおり遺留分権利者が価額弁償請求権を確定的に取得し,かつ,受遺者に対し弁償金の支払を請求した日の翌日ということになる。」
*最判昭51.8.30
 
「民法一〇四一条一項が、目的物の価額を弁償することによつて目的物返還義務を免れうるとして、目的物を返還するか、価額を弁償するかを義務者である受贈者又は受遺者の決するところに委ねたのは、価額の弁償を認めても遺留分権利者の生活保障上支障をきたすことにはならず、一方これを認めることによつて、被相続人の意思を尊重しつつ、すでに目的物の上に利害関係を生じた受贈者又は受遺者と遺留分権利者との利益の調和をもはかることができるとの理由に基づくものと解されるが、それ以上に、受贈者又は受遺者に経済的な利益を与えることを目的とするものと解すべき理由はないから、遺留分権利者の叙上の地位を考慮するときは、価額弁償は目的物の返還に代わるものとしてこれと等価であるべきことが当然に前提とされているものと解されるのである。このようなところからすると、価額弁償における価額算定の基準時は、現実に弁償がされる時であり、遺留分権利者において当該価額弁償を請求する訴訟にあつては現実に弁償がされる時に最も接着した時点としての事実審口頭弁論終結の時である解するのが相当である。」

 としています。

 

 この判例は、1041条のところだけでなく、412条(履行遅滞)のところでも出題され得る。遅滞に陥る時期に関する他の判例とあわせて押さえておいたほうが良い。

 

<答> ア 正しい  イ 誤り

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H20-6 タイクツです…

<民法> 重要度 A / 難易度 易

ウーン、これも簡単だ。

頻出論点だし、特にひねりもないし。

 

<問> 次の記述は,無権代理と相続に関する教授と学生との対話である。教授の質問に対する次のアからオまでの学生の解答のうち,判例の趣旨に照らし誤っているものの組合せは,後記1から5までのうちどれか。

教授: 無権代理人Aが,父親Bを代理して,第三者Cに対し,B所有の不動産を売り渡したという事例を前提として,無権代理と相続について考えてみましょう。まず,Bが追認も追認拒絶もしないまま死亡し,AがBを単独相続した場合,BC間の売買契約の効力はどうなりますか。

学生:ア この場合,無権代理人が本人の地位を単独相続し,本人と無権代理人の地位が同一に帰するに至っていますので,BC間の売買契約は当然に有効になります。

教授: Bが,死亡する前に,Cに対してAの無権代理行為の追認を拒絶していた場合には,どうなりますか。

学生:イ 無権代理人がした行為は,本人が追認を拒絶すれば無権代理行為の効力が本人に及ばないことが確定しますので,本人であるBが無権代理行為の追認を拒絶した場合には,その後に無権代理人であるAが本人であるBを相続したとしても,BC間の売買契約は当然に有効になるものではありません。

教授: それでは,Bが追認も追認拒絶もしないまま死亡し,Bの子であるA,D及びEが共同相続をした場合には,どうなるでしょうか。

学生:ウ この場合,無権代理人が本人の地位を共同相続した場合ですので,他の共同相続人全員が共同して無権代理行為を追認しない限り,無権代理人の相続分に相当する部分においても,BC間の売買契約は当然に有効となるものではありません。

教授: では,Aが死亡してBがAを単独で相続した場合は,どうでしょうか。

学生:エ この場合,無権代理人の地位を相続した本人が無権代理行為の追認を拒絶しても,何ら信義に反するところはありませんから,BC間の売買契約は当然に有効となるものではありません。また,BがAの民法第117条による無権代理人の責任を相続することもありません。

教授: では,Aが死亡し,B及びAの母親Fが共同相続した後,Bが追認も追認拒絶もしないまま死亡し,FがBを単独相続した場合は,どうでしょうか。

学生:オ この場合,無権代理人の地位を本人と共に相続した者が,さらに本人の地位を相続していますが,その者は,自ら無権代理行為をしたわけではありませんから,無権代理行為を追認することを拒絶しても,何ら信義に反するところはないため,BC間の売買契約は当然に有効となるものではありません。

1 アイ  2 アオ  3 イウ  4 ウエ  5 エオ

 

小難しい解説はしないので、その点はよろしく。

◆何も言うことはない
 肢アは正しい。判例まま。これを間違えるなんてありえない。
 アは正しいので、1と2は消える。次はウを検討する。

 

◆頻出の判例
 肢ウは正しい。これも判例まま。
 ということで、3と4も消える。ということで、5が正解。

 

 

 

<答> 5

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H20-5 チョーカンタン♪

<民法> 重要度 A / 難易度 易

今年は出だしはカンタンな問題が多いね。

こういう問題は、ケアレスミスだけ気をつけよう。

 

<問> 次の対話は,下記の問題に関する教授と学生との対話である。教授の質問に対する次のアからオまでの学生の解答のうち,正しいものの組合せは,後記1から5までのうちどれか。

(問題)
「特定物売買において,目的物に契約当初から瑕疵があるのに,買主がそれを知らずに瑕疵のない物と信じて契約を締結した場合について,買主は錯誤と瑕疵担保責任のいずれを主張することができるか。」

教授: 今日は,この問題を基にして,錯誤と瑕疵担保責任の関係について議論をしましょう。まず,錯誤と瑕疵担保責任の法的効果について説明をしてください。

学生:ア 瑕疵担保責任の場合は,契約の解除又は損害賠償の請求をすることができるのに対し,錯誤の場合は,契約の無効を主張することができます。

教授: 錯誤と瑕疵担保責任とで,主張の期間制限に差異はありますか。

学生:イ 錯誤無効の主張の期間制限は,引渡時を起算点とする消滅時効だけですが,瑕疵担保責任に基づく権利行使には,買主が瑕疵を知った時から1年の期間制限があります。

教授: 瑕疵担保責任の規定を錯誤の規定に優先して適用すべきだという考え方がありますが,その根拠としてどのようなことが考えられますか。

学生:ウ 契約各則に規定されている瑕疵担保責任の規定が民法総則に規定されている錯誤の規定の特則に当たることが根拠として考えられます。

教授: それでは,錯誤の規定を優先して適用すべきだという考え方の根拠としてどのようなことが考えられますか。

学生:エ 実質的に代金減額に等しい柔軟な解決ができることや,取引の安全の保護に資することが根拠として考えられます。

教授: それでは,錯誤の規定が優先的に適用されると考えた場合,買主が少し調べれば瑕疵の存在に気付くことができたようなときでも,錯誤の主張をすることはできますか。

学生:オ 錯誤を主張するためには,無過失であることが必要なので,買主が少し調べれば瑕疵の存在に気付くことができたようなときには,錯誤の主張をすることはできません。

1 アイ  2 アウ  3 イエ  4 ウオ  5 エオ

 

小難しい解説はしないので、その点はよろしく。

◆基礎知識
 肢アは正しい。瑕疵担保責任については、570条、566条。錯誤については95条。
 アは正しいので、1か2に絞れる。次はイを検討する。

 

◆またもや基礎知識
 肢イは誤り。錯誤無効の主張に期間制限はない。瑕疵担保責任に関する記述は正しい(570条)。
 ということで、たぶん答は2なのだが、ウも誤りでエオが正しくて5が正解という可能性もゼロではないので、ウも検討しておく。

 

◆基礎知識と、論理的思考力
 肢ウは正しい。一般法と特別法、優先するのは特別法。法律行為一般に関する錯誤の規定と、法律行為の中の売買契約に関する瑕疵担保責任の規定の双方が適用可能であれば、瑕疵担保責任が優先するという結論になる。
 ということで、2が正解とわかる。

 

(おまけ)

◆基礎知識と当てはめ
 肢エは誤り。錯誤の効果は法律行為の無効。ありか、なしか、という二者択一の処理しかないので、柔軟な解決にはならんでしょ。だから誤り。

 

◆基礎知識と注意力?
 肢オは誤り。前段部分の「無過失でなければ」というところが誤りなのだが、見落とさないように。通常の五肢択一だとこういうところで引っ掛けないんだけど、会話問題だとこういうのもある。

 

 

<答> 2

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H20-4 mata??

<民法> 重要度 A / 難易度 並

超・重要論点、かつ、過去問で何回も見ているはず。

これを落とした人には普段どういう勉強の仕方をしてたのか聞いてみたい・・・

 

<問> 虚偽表示によって権利者として仮装された者から直接に権利を譲り受けた第三者が善意であった場合において,その「善意の第三者」からの転得者等も民法第94条第2項によって保護されるか否かという問題については,「転得者等が善意の場合にのみ保護する」という見解がある。次のアからオまでの記述のうち,この見解に対する批判として不適切なものの組合せは,後記1から5までのうちどれか。

ア この見解によれば,転得者が前主である善意の第三者に対して担保責任を追及することができることとなって,善意の第三者に不利益が生じる可能性がある。

イ この見解によれば,悪意の転得者も,いったん善意の第三者に権利を取得させた上で,この善意の第三者から権利を譲り受ければ,当該権利を取得することができることになる。

ウ この見解によれば,善意の第三者が,悪意の第三者のために虚偽表示の対象となった財産に抵当権を設定した場合に,法律関係が複雑になるおそれがある。

エ この見解によれば,善意の第三者が虚偽表示の対象となった財産を処分したり,当該財産に担保権を設定したりすることが,事実上大幅に制約されることになる。

オ この見解によれば,保護の対象から第三者を例外的に除外することを検討しなければならなくなるが,その識別基準にあいまいなところがある。

1 アウ  2 アエ  3 イウ  4 イオ  5 エオ

 

小難しい解説はしないので、その点はよろしく。

◆論理的思考と基礎知識
 肢アは批判として適切。設問の見解だと、①転得者が悪意の場合は原所有者に取り戻されてしまい、②転得者は他人物を買わされたことになるから担保責任を追及できる(悪意でも解除できる→561条)。これはオカシイんじゃないか、と批判されるわけだ。
 アは不適切ではないので、1と2は消える。次はイを検討する。

 

◆読み替えができたか?
 肢イは批判として不適切。設問の見解は、「転得者自身が善意か悪意かによって保護されるかどうかが決まる」と読み替えられる。判断基準は転得者自身の善悪にあるのだから、善意の者から取得したかどうかなんか関係ない。完全に的外れな記述となっている。
 ということで、3か4に絞れる。次はウを見る。

 

◆当てはめ、当てはめ
 肢ウは批判として適切。転得者が悪意だと、原所有者との関係では権利を主張できないから、抵当権は主張できない(設問の見解)。けど、これは転得者(抵当権者)と善意の第三者(設定者)との間には無関係だから、両者の間では抵当権は有効(法の原則どおり)。抵当権があったり、なかったり。複雑になるじゃねーか!と批判されるわけだ。
 ということで、4が正解とわかる。

 

(おまけ)

◆読み替え&当てはめ
 肢エは批判として適切。設問の見解は転得者の善悪で判断するという説。とすると、善意の第三者は転得者が悪意だと関係がややこしくなるし、最悪の場合は担保責任を追及されたりするので、取引しようとするものが悪意かどうか調べないといけなくなっちゃう。

 

◆これも読み替えができていたかどうか
 肢オは批判として不適切。肢イのところでも触れたように、設問の見解は「転得者の善悪を基準に考える」という説。第三者は判断基準と関係ないから的外れな記述だと分かる。

 

 

<答> 1

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新判例Quiz(19)

<民法> 重要度 B

<問> 次の記述は正しいか。

 内縁の夫の運転する自動車に同乗中に第三者の運転する自動車との衝突事故により傷害を負った内縁の妻が第三者に対して損害賠償を請求する場合,その賠償額を定めるに当たっては,内縁の夫の過失を被害者側の過失として考慮することはできない。

 

 

 判例(最判平19.4.24裁判所HP)は,

(1) 民法722条2項の「被害者」の意義
 「不法行為に基づき被害者に対して支払われるべき損害賠償額を定めるに当たっては,被害者と身分上,生活関係上一体を成すとみられるような関係にある者の過失についても,民法722条2項の規定により,いわゆる被害者側の過失としてこれを考慮することができる(最高裁昭和40年(オ)第1056号同42年6月27日第三小法廷判決・民集21巻6号1507頁,最高裁昭和47年(オ)第457号同51年3月25日第一小法廷判決・民集30巻2号160頁参照)。」
(2) 内縁の場合
 「内縁の夫婦は,婚姻の届出はしていないが,男女が相協力して夫婦としての共同生活を営んでいるものであり,身分上,生活関係上一体を成す関係にあるとみることができる。そうすると,内縁の夫が内縁の妻を同乗させて運転する自動車と第三者が運転する自動車とが衝突し,それにより傷害を負った内縁の妻が第三者に対して損害賠償を請求する場合において,その損害賠償額を定めるに当たっては,内縁の夫の過失を被害者側の過失として考慮することができる」 

 としています。

 

 

<答> 誤り

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新判例Quiz(18)

<民法> 重要度 A

<問> 次の記述は正しいか。

 土地を目的とする先順位の甲抵当権が消滅した後に後順位の乙抵当権が実行された場合において,土地と地上建物が甲抵当権の設定時には同一の所有者に属していなかったとしても乙抵当権の設定時に同一の所有者に属していたときは法定地上権が成立する。

 

 

 判例(最判平19.7.6裁判所HP)は,

(1) 乙の利益・期待
 「乙抵当権者の抵当権設定時における認識としては,仮に,甲抵当権が存続したままの状態で目的土地が競売されたとすれば,法定地上権は成立しない結果となる(前掲平成2年1月22日第二小法廷判決参照)ものと予測していたということはできる。しかし,抵当権は,被担保債権の担保という目的の存する限度でのみ存続が予定されているものであって,甲抵当権が被担保債権の弁済,設定契約の解除等により消滅することもあることは抵当権の性質上当然のことであるから,乙抵当権者としては,そのことを予測した上,その場合における順位上昇の利益と法定地上権成立の不利益とを考慮して担保余力を把握すべきものであったというべきである。したがって,甲抵当権が消滅した後に行われる競売によって,法定地上権が成立することを認めても,乙抵当権者に不測の損害を与えるものとはいえない。」
(2) 甲の利益・期待
 「甲抵当権は競売前に既に消滅しているのであるから,競売による法定地上権の成否を判断するに当たり,甲抵当権者の利益を考慮する必要がないことは明らかである。そうすると,民法388条が規定する「土地及びその上に存する建物が同一の所有者に属する」旨の要件(以下「同一所有者要件」という。)の充足性を,甲抵当権の設定時にさかのぼって判断すべき理由はない。 民法388条は,土地及びその上に存する建物が同一の所有者に属する場合において,その土地又は建物につき抵当権が設定され,その抵当権の実行により所有者を異にするに至ったときに法定地上権が設定されたものとみなす旨定めており,競売前に消滅していた甲抵当権ではなく,競売により消滅する最先順位の抵当権である乙抵当権の設定時において同一所有者要件が充足していることを法定地上権の成立要件としているものと理解することができる。原判決が引用する前掲平成2年1月22日第二小法廷判決は,競売により消滅する抵当権が複数存在する場合に,その中の最先順位の抵当権の設定時を基準として同一所有者要件の充足性を判断すべきことをいうものであり,競売前に消滅した抵当権をこれと同列に考えることはできない。」
(3) 結論
 「土地を目的とする先順位の甲抵当権と後順位の乙抵当権が設定された後,甲抵当権が設定契約の解除により消滅し,その後,乙抵当権の実行により土地と地上建物の所有者を異にするに至った場合において,当該土地と建物が,甲抵当権の設定時には同一の所有者に属していなかったとしても,乙抵当権の設定時に同一の所有者に属していたときは,法定地上権が成立する。」 

 としています。

 

 

<答> 正しい

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新判例Quiz(17)

 
<民法> 重要度 B

<問> 次の記述は正しいか。

 物上保証人に対する不動産競売の開始決定の主債務者への送達後に,保証人が代位弁済をして差押債権者の承継を申し出た場合には,承継の申出についての民法155条所定の通知がされなくても,求償権の消滅時効は,上記申出の時から競売手続の終了まで中断する。
※ 民法155条 「差押え、仮差押え及び仮処分は、時効の利益を受ける者に対してしないときは、その者に通知をした後でなければ、時効の中断の効力を生じない。」

 

 

 判例(最判平18.11.14裁判所HP)は,

 「債権者が物上保証人に対して申し立てた不動産競売について,執行裁判所が競売開始決定をし,同決定正本が主債務者に送達された後に,主債務者から保証の委託を受けていた保証人が,代位弁済をした上で,債権者から物上保証人に対する担保権の移転の付記登記を受け,差押債権者の承継を執行裁判所に申し出た場合には,上記承継の申出について主債務者に対して民法155条所定の通知がされなくても,」「上記代位弁済によって保証人が主債務者に対して取得する求償権の消滅時効は,上記承継の申出の時から上記不動産競売の手続の終了に至るまで中断する」。
(1) 承継の申出をすれば“権利の上に眠る者”とはいえない
 「保証人は,上記代位弁済によって,主債務者に対して求償権を取得するとともに,債権者が主債務者に対して有していた債権(以下「原債権」という。)と上記担保権を代位により取得するところ(民法501条),原債権と上記担保権は,求償権を確保することを目的として存在する付従的な性質を有するものであり(最判昭61.2.20民集40-1-43参照),保証人の上記承継の申出は,代位により取得した原債権と上記担保権を行使して,求償権の満足を得ようとするものであるから,これによって,求償権について,時効中断効を肯認するための基礎となる権利の行使があったものというべきである(最判昭7.3.23民集49-3-984参照)。」
(2) 時効中断効の継続と通知の要否
 ① 前提 - 競売申立ての原債権に対する時効中断効
 「物上保証人に対する不動産競売の開始決定正本が主債務者に送達された場合には,原債権の消滅時効は,同決定正本が主債務者に送達された時から上記不動産競売の手続の終了に至るまで中断するが(最判平7.9.5民集49-8-2784,最判平8.7.12民集50-7-1901参照),このことは,途中で,代位弁済による差押債権者の承継があった場合も異ならないので,差押債権者の承継は,一般に,原債権の消滅時効について主債務者に不利益を生じさせるものではない。」
 ② 求償権に対する時効中断効
 「そして,上記のとおり,原債権は求償権を確保することを目的として存在するものであるから,このことは,同時に求償権の消滅時効についても当てはまるものである。」
 ③ 通知の要否
 「また,保証人に保証の委託をしていた主債務者においては,自ら弁済するなどして上記不動産競売の手続の進行を止めない限り,保証人が代位弁済をして差押債権者の承継を申し出るということは,当然に予測すべきことというべきである。民法155条は,時効の利益を受ける者(以下「時効受益者」という。)以外の者に対して時効中断効を生ずる行為がされた場合に,時効受益者が不測の不利益を被ることがないように,上記行為があったことを時効受益者に通知すべきことを定めた規定であるが(最判昭50.11.21民集29-10-1537参照),既に物上保証人に対する不動産競売の開始決定正本の送達を受けて時効中断効を生ずる行為があったことの通知を受けている時効受益者たる主債務者については,上記のとおり,一般に差押債権者の承継によって原債権の消滅時効ひいては求償権の消滅時効について不利益を被ることはなく,また,保証人が代位弁済をして差押債権者の承継を申し出ることは当然に予測すべきことであるから,上記承継の申出があったことの通知を受けなければ不測の不利益を被るということはできない。そうすると,民法155条の法意に照らし,上記承継の申出については,時効受益者たる主債務者に対する時効中断の問題に関する限り,主債務者に通知することを要しないというべきである。」
(3) 結論
 「以上によれば,前記の場合には,前記代位弁済によって保証人が主債務者に対して取得する求償権の消滅時効は,前記承継の申出の時から前記不動産競売の手続の終了に至るまで中断するというべきである。」 

 としています。

 

 

<答> 正しい

 

 最近また忙しくなってきてしまったので,ちょっと手抜きです(ほとんど判旨を貼っただけ)。 まことに申し訳ありませんが,ご宥恕下さい。
 この判例はかなり読み応えがあり,初学者の方が自分で読みこなすのは難しい気がします。 読んでも良く分からないという方は,判旨の中に引用されている判例のみチェックしておけば良いかと思います。 

 

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新判例Quiz(15)

 
<民法> 重要度 B

<問> 「Aは,B所有の甲土地の占有を開始し,それから10年後,Aの取得時効が完成したが,時効完成後にCがBから甲土地を譲り受けた。」という事例に関する次の記述は正しいか。

① AとCとは対抗関係に立つので,Cが先に登記を備えている場合,AはCに対して所有権を主張できない。 しかし,その場合でもCが背信的悪意者といえるときは,Aは登記なくしてCに自己の所有権を主張することができる。
② Cが背信的悪意者と言えるためには,Aが取得時効の成立要件を充足していることをすべて具体的に認識していることを要する。

 

 

 判例(最判平18.1.17民集60-1-27)は,

① AとCとは対抗関係に立つ(「時効により不動産の所有権を取得した者は,時効完成前に当該不動産を譲り受けて所有権移転登記を了した者に対しては,時効取得した所有権を対抗することができるが,時効完成後に当該不動産を譲り受けて所有権移転登記を了した者に対しては,特段の事情のない限り,これを対抗することができない」)
  しかし,Cが背信的悪意者であれば,AはCに対しては登記なくして所有権を主張できる。 
なぜなら,「民法177条にいう第三者については,一般的にはその善意・悪意を問わないものであるが,実体上物権変動があった事実を知る者において,同物権変動についての登記の欠缺を主張することが信義に反するものと認められる事情がある場合には,登記の欠缺を主張するについて正当な利益を有しないものであって,このような背信的悪意者は,民法177条にいう第三者に当たらない」からである。
※ ①は,既存の判例理論を踏襲しただけである。
② Cが背信的悪意者と言えるためには,Aが取得時効の成立要件を充足していることをすべて具体的に認識していることまでは必要でない。 
なぜなら,「取得時効の成否については,その要件の充足の有無が容易に認識・判断することができ」ず,全てについての認識を要求するのは妥当でないからである。
  しかし,少なくとも,CがAによる「多年にわたる占有継続の事実を認識している必要がある」。 
 

 としています。

 

※ 補足
 本件の事案は,Aが通路として使用していた土地が,時効完成後に真の所有者BからCに譲渡され,登記も経由したというものである。
 最高裁は,原審の判断にはCがAによる多年にわたる占有継続の事実を認識していたかどうかという点につき審理不尽があるとして,破棄・差戻し。

 

<答> ①正しい ②誤り
 

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新判例Quiz(4)

<民法> 重要度 A

<問> 次の記述は正しいか。

 動産売買の先取特権者は,物上代位の目的債権が譲渡され対抗要件が備えられた後には,当該債権を差し押さえて物上代位権を行使することができない。

※ 前提知識
 ・ 抵当権者は,物上代位の目的である債権が第三者に譲渡されその対抗要件が備えられた後であっても,債権譲渡は「払渡し又は引渡し」(民372,304)に当たらないから,その後に目的債権を差し押えて物上代位権を行使することができる(最判平10.1.30民集52-1-1【最高裁 時の判例Ⅱ47】 )。過去問アリ( H17-14-ウ )。 <重要度 A>
 ・ 動産売買の先取特権者は,物上代位の目的である債権について一般債権者が差押又は仮差押の執行をしただけのときは,その時点ではまだ民法304条にいう「払渡し又は引渡し」がなされたとはいえないので,その後に目的債権に対し物上代位権を行使することができる(最判昭60.7.19民集39-5-1326【百選Ⅰ82】 )。 <重要度 A>

 判例は,

 動産売買の先取特権者は,物上代位の目的債権が譲渡され第三者に対する対抗要件が備えられた後においては,目的債権を差し押さえて物上代位権を行使することができない (最判平17.2.22民集59-2-314 )。

 としています。

※ 補足
 ・ 抵当権の場合と結論が異なっているが,その理由として最高裁は,抵当権と違って動産先取特権には登記等の公示方法がない点を挙げている。

<答> 正しい。

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新判例Quiz(2)

<民法> 重要度 C

<問> 「X所有の甲不動産に,YのXに対する2個の債権(債権額2,000万円のa債権と,債権額1,000万円のb債権)を担保するため,1個の抵当権が設定されている。なお,a債権については,Zが保証人となっている。」という事例に関する次の記述は正しいか。

 a債権についてはZが全額を代位弁済したが,XはZからの求償に全く応じず,b債権についても全く弁済をしなかったため,甲不動産が競売に付された。
 この場合の甲不動産の売却代金が1,500万円であったとすると,その売却代金については債権者Yが優先して1,000万円の配当を受け,保証人Zは残りの500万円の配当を受けることになる。

※ 前提知識
 ・ 債権者に代位した者は,自己の権利に基づいて求償をすることができる範囲内において,債権の効力及び担保としてその債権者が有していた一切の権利を行使することができる(民501本文) <重要度 A>
 ・ 債権の一部について代位弁済があったときは,代位者は,その弁済をした価額に応じて,債権者とともにその権利を行使する(民502Ⅰ) <重要度 A>

 判例は,

 債権者と保証人は,両者間に抵当不動産の売却代金からの弁済の受領についての特段の合意がない限り,債権者が有する残債権額と保証人が代位によって取得した債権額に応じて案分して弁済を受ける (最判平17.1.27民集59-1-200 )。

 としています。

 よって,配当受領額は,債権者Yが500万円,保証人Zが1,000万円となります。

 

<答> 誤り。

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新判例Quiz(1)

<民法> 重要度 B

<問> 次の記述は正しいか。

 Xが死亡し,その子であるABCが共同相続人となっている場合に,ABC間の遺産分割協議により相続財産中の甲不動産をAが単独で取得することとなったときは,相続開始後,遺産分割協議が調うまでの間に甲不動産から生じた賃料債権はAに帰属する。

※ 前提知識
 ・ 相続人が数人あるときは,相続財産は,共同相続人全員の共有に属する(民899)。  ただし,相続財産中の可分債権は法律上当然に分割され,各共同相続人がその相続分に応じて権利を承継することになる(最判昭29.4.8民集8-4-819 ) <重要度 A>
 ・ 遺産の分割は,相続開始の時にさかのぼってその効力を生ずる(民909本文) <重要度 A>

 判例は,

 相続開始から遺産分割までの間に共同相続に係る不動産から生ずる賃料債権は,各共同相続人がその相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得し,この賃料債権の帰属は,後にされた遺産分割の影響を受けない (最判平17.9.8民集59-7-1931 )。

 としています。

 よって,相続開始後,遺産分割協議成立までの間に生じた賃料債権は,ABCにそれぞれ3分の1ずつ帰属することになります。 

 

<答> 誤り。

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